村上シンジ 連続ブログ小説 「零」8
「都内某所の小さなライブハウスでのオーディション。演奏曲はBorn To Be Wildと自分達の曲で2曲。」
と言う情報はCちゃんから聞いていた。
情報が漏れないように細心の注意が必要で、それを間に入って伝えるCちゃんは非常に大変そうであった。
そして、そこから推測すると、オーディションが行われるライブハウスには髪を整える洗面所や、ウォーミングアップをする場所は無いと見るべきだろう。
いつもはライブの1時間前から20分程ウォーミングアップで汗を流して、それが終わるとユックリ髪を整えて本番に備える。
このウォーミングアップはかなり体力を消耗するし、面倒臭くなるときもあるが、これをしておかないと緊張と興奮でガチガチに力が入ってしまい、思うように体が動かなくなるのだ。
それに、上半身裸やパンツ一丁でライブをする事も多々あったので、筋肉を引き締めるといった意味でも大きな役割を担っていたと言える。
今回はCMだし、裸になる事はまず無いからそれは良いとして、髪型も家で整えていけば良い。
ストレッチなどがしっかり出来ないのは痛手だが、世の中そんな甘い現場ばかりではない。
誰もが同じ条件。
みんな必死で夢を掴もうと頑張っているのだ。
楽屋が狭いからなんだ。
リハーサルがないからなんだ。
虎はなぜ強いのか。
生まれた時から強いのだ。
思わず「花の慶次」の名言が脳裏を駆け巡る。
とにかく出来る事をやる。
文句を言う暇があったら一回でも多く課題曲を聴く方がいい。
悲しみ堪えて微笑むよりも、涙枯れるまでなく方がいい。
思わず「送る言葉」の歌詞が脳裏を駆け巡る。
午後4時。
現地に到着。
まだ時間に余裕があり、お腹が減っていた僕は、「フレッシュネスバーガー」にて遅めの昼食を摂る事にした。
「腹が減っては戦は出来ぬ」だ。
しかし、「腹一杯食べすぎて動けぬ」事もあったので注意は必要だ。
でもまぁ、裸になる事はないし、演奏は2曲。
「ウォーミングアップ出来ない分しっかり食べて緊張を解そう!」とバーガーセットを注文し、美味しくいただいた。
お腹パンパン。
自分で見ていても「幸せそうなお腹」である。
いざ、出陣。
荷物を持ち、ライブハウスがある地下に降りて行く。
現場の空気は慌ただしい。
先に入っていたCちゃんも何処か落ち着かない感じだ。
やはり、直ぐに支度して、直ぐに演奏するらしい。
予想通り。
こちとら準備万端じゃい。
Cちゃん「あっ!そうそう!ワイルドな感じが見たいからJ音とジョーくんは裸で演奏して欲しいって!」
J音、僕「えー!!??」
S子「俺は?」
Cちゃん「Sちゃんは着て!笑」
予想外。
清涼飲料水のCMで裸。
想定外。
そして、楽屋に大量に置いてあったペットボトル。
そのラベルを見たとき、全ての謎が解けた。
そして、「清涼飲料水with裸」にも納得できた。
だが、僕のお腹はWILDとは程遠い形をしていた。
続く。