シンジvs火星
宇宙船が火星の上空10kmまで降下すると、ガラリと風景が変わった。
間違って戻って来てしまったのかと思うほど、地球にそっくりだったのだ。
海も陸も山も木もビルも道路も酸素もある。
きっと他の星の宇宙人がやってこない様に視覚的なバリアを張っているのだろう。
人間の目に見えてるものなんて宇宙ではアテにならないのかも知れない。
そりゃそうだ、誰も行った事ないのだから、実際どうなのかなんてわかる訳がない。
地球にだって今だに日本にサムライが沢山いると思っている外国人がいるぐらいだからね。
僕が乗っているこの宇宙船もそう言う機能が備えてあるらしく、撃ち落とされる事もなく普通に畑に着陸する事が出来た。
降りてすぐに火星人を発見。
見た目は普通の地球人となにも変わら無い。
人見知りの僕も、流石に宇宙だし、勇気を出して話しかけてみよう近づいてみた。
すると火星人はこちらを振り向き、なんと日本語で話しかけてきたのだ。
いや、話しかけてきたと言うより、頭の中に直接意思を伝えてくるような感じだろうか。
いわゆるテレパシーってやつだ。
これはこれで便利だが、下手な事を考えたら全部バレちゃうのかと心配したが、そこら辺はうまく出来ていて、伝えたいと思った事だけを読み取る事が出来るのだと言っていた。
火星人「あれ!もしかしてFUZZYCONTROLのジョーさんですか!?僕ファンなんですー!!いつ火星に来たんですか!?いやー嬉しいなー握手して下さい!」
僕「へ??なんで知ってるの?」
火星人「いやだなぁ、火星で知らない人居ないっすよー!あ!JUONさんおめでとうございます!!」
なんて事だ。今や地球の音楽や情報などは火星に全て筒抜けなのだ。
でもそんな事よりもこの土地でまさかの売れっ子だったとは夢にも思わなかった。
後から聞いた話、初めて地球からの電波を傍受した音が偶然にもラジオでかかって居たファジコンの曲だったのが始まりらしい。
理由はどうあれ、沢山の人に好んで聴いてもらえるのは嬉しいのでまぁいいか。
火星人「良かったら僕が火星を案内しますよ!あ、僕の名前はジャムです!ジャムって呼んで下さい!よろしくです!」
「そのまんまやんけ。」と言う言葉が出かけたが、飲み込んだ。
火星人が何がツボで、何が地雷で、どの位危険なのかわからぬ内は下手な事は言えない。
それにもし逆の事を考えたら、地球に来た宇宙人と話が出来たとして、その宇宙人がメチャクチャ空気読めない嫌な奴だったら、地球人は何をするのか。
僕は少し恐ろしくなったが、下手に断るのもアレだし、折角火星まで来たのだからもう少し見てみたいと思っていた。
僕「是非お願いします!ありがとー!」
ジャム「ケケケケ!」
ジャムは不気味に笑った。
こうして二泊三日の壮絶な火星旅行が始まったのだ。
続く。